深夜営業したい飲食店必見!深夜における酒類提供飲食店に必要な手続きと書類を徹底解説【愛知県版】
深夜営業飲食店の基礎知識
今回のテーマは「深夜における酒類提供飲食店営業」についてです。(以下、「深酒」とします)
そもそも深夜って何時から何時までのことなのか?どこでも営業できるの?誰に対してどのような手続きをすればいいのか?など深夜営業を開始する前に知っておきたいことを解説していきます。
深夜とは?具体的な時間帯と届出が必要となる要件
まず「深夜」の意義から見ていきましょう。愛知県の風営法施行条例には時間について次のように書かれています。
風営法施行条例第七条備考
- 「昼間」とは、午前6時後午後6時前の時間をいう。
- 「夜間」とは、午後6時から翌日の午前0時前の時間をいう。
- 「深夜」とは、午前0時から午前6時までの時間をいう。
これにより午前0時から午前6時において営業する場合には深夜営業にあたるということになります。0時までに閉店するお店であれば、飲食店営業許可のみで営業することができます。
深夜酒類提供飲食店とは?深夜営業の飲食店との違い
深酒の営業を開始するには営業開始の届出が必要です。しかし深夜に営業する飲食店が全て深酒に該当するかといえば、そうではありません。届出が必要になるのは2つの要件を満たした場合です。
深酒の届出が必要となる2要件
要件①深夜(午前0時から午前6時)に営業する
要件②主として酒類を提供する飲食店
②の「主として」とあるのは、深夜に提供する主力のメニューが酒類の場合で深夜まで営業する居酒屋やバー、パブなどが該当します。深夜に営業するラーメン店や牛丼店でビールを提供する場合や深夜営業を営む喫茶店なども届出は必要ありません(飲食店営業の許可は必要です)。業態によっては「主として」にあたるかどうか分からないお店もあると思います。そんなときは事前に営業所所在地を管轄する警察署の生活安全課にご自身のお店が深酒にあたるのか相談してみましょう。
また深酒の大前提として「接待」は出来ません。接待を伴う営業は風俗営業の許可が必要です。また「遊興」を提供する場合は別の特定遊興飲食店営業の許可が必要となります。ともに無許可で営業した場合、無許可営業となります。今年6月の改正で無許可営業の罰則はさらに重くなりました。知らなかったでは済まされないことになりますので、絶対にやめましょう。
営業所の要件確認
要件③用途地域を確認
深酒の営業はどの地域でも営むことが可能なのかというと、そうではありません。風営法33条第四項では[都道府県は必要があるときは、条例で酒類提供飲食店を営むことを禁止する地域を定めることができる]としています。愛知県を例に挙げますと[第一種地域*にあっては深夜において酒類提供飲食店を営んではならない]と定められています。第一種地域とは住宅系用途地域を一括りにした呼称です。物件個別の用途地域を調べる際は「市区町村 用途地域」などで検索すれば自治体のページが簡単に出てきます。なるべく契約前に確認しておきたいですね。
*愛知県の第一種地域とは都市計画法で定める第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域及び田園住居地域のことをいいます。
要件④お店の設備を確認
営業所の設備にも基準が設けられています。保健所の審査では、触れられていなかった部分についての基準となります。お店のレイアウトや内装などを決める際には内装業者さんとのすり合わせも必要となります。特に個室を作る場合には後から床面積が足りない、、なんていうことが無いように注意しましょう。
深夜における飲食店営業の営業所の技術上の基準
一 客室の床面積は、一室の床面積を九・五平方メートル以上とすること。ただし、客室の数が一室のみである場合は、この限りでない。
二 客室の内部に見通しを妨げる設備(おおよそ100㎝以上)を設けないこと。
三 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
四 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。
五 営業所内の照度が二十ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
六 騒音(50デシベル)又は振動(55デシベル)の数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
深夜酒類提供飲食店の営業開始に必要な手続き
届出の流れと注意点
深酒の営業を開始するにあたっては、予め営業所の所在地を管轄する都道府県の公安委員会に届出をしなければなりません。公安委員会とはいっても、実際の窓口は営業所の所在地を管轄する警察署となります。
届出の期日は愛知県警では深酒を開始しようとする日の10日前までに提出するよう求められています。他の都道府県の場合は各自治体の警察本部ホームページなどで確認できます。既に酒類提供飲食店の営業を開始していて、これから深夜まで営業時間を延長しようというお店もあるかと思います。その場合であっても深酒を開始できるのは、届出の日から10日後からですので注意しましょう。
それでは、届出の一連の流れをフローチャートにして見ていきます。①②③については必ずしも順番通りではなく同時進行も含まれますが目安としてご覧ください。まだ飲食店営業許可について、よく分からないよという場合は下のリンクからお読みいただければ幸いです。

- ①警察への事前相談
- 保健所とは違い、事前相談は公式には求められてはいません。しかしながら届出に添付が求められる書類(後ほど解説します)は警察署ごとにが異なることの方が多いです。確認は事前に行っておいた方が営業開始までの時間を短縮する上では非常に大事になります。また、相談自体はいつからでも可能です。お店の物件を決めるタイミングや保健所への営業許可申請前など早め早めに何度でも行う方がよいでしょう。
◎事前相談のポイント
・管轄署の確認(近い警察署が管轄とは限らない。)
・お店が深酒にあたるか
・用途地域について
・必要な添付書類 など

- ②保健所への飲食店営業許可申請と許可証受け取り
- 届出の際には飲食店営業許可証のコピーが必要となります。許可を受けてからでないと深酒の届出は受理されないため余裕を持ったスケジュール管理で進めておきましょう。

- ③必要書類一式の作成
- まずは愛知県警のホームページに記載されている書類の一覧です。
・深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書
・営業の方法を記載した書類
・営業所の平面図
・住民票(本籍又は国籍記載のもの)
・法人の場合の追加書類
・定款及び登記事項証明書
・役員全員分の住民票
この他にも警察署ごとに添付を求められる書類(指導書類)が複数ありますが、それについては後述します。

- ④警察署への届出日の予約電話
- ①の事前相談を行うと分かるのですが、ほとんどの警察署生活安全課は行政手続きについて電話による予約制となっています。それとは知らずに直接、書類を持参しても担当者が不在であったり、受付で取り次いでもらえない場合もあります。必ず、予約電話を入れて日程を確保してください。

- ⑤届出日当日
- 届出では許可と違い、営業所所在地での実地調査は行われません。書類で求められるすべてを語る必要があります。そのため書類内容についての訂正、差し替え、追加書類や口頭での営業内容説明など数々のチェックが入ります。個人で届出手続きを行うと受領に至るまで、何度も警察署へ出向くことも珍しいことではありません。その日のうちに再提出できれば良いですが、また後日持ってきてね。ということも普通にあります。根気をもとめられる作業になりますが、届出書受領まで一つ一つクリアしていってください。
受領されると、それを証する「申請・届出受領証」を渡されます。許可証ではありませんが、深酒の届出が済んでいることを証明する書面ですから飲食店営業許可証と並べて掲示しておくと良いでしょう。

- ⑥深夜営業開始
- 届出受領から10日後に待望の、深夜営業開始となります。

深夜酒類提供飲食店営業の届出に必要な書類一覧
深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書
営業開始届出書の添付書類
- 営業の方法を記載した書面
- 営業所の平面図
- 住民票(本籍又は国籍記載のもの)の写し
- 法人の場合の追加書類
- 定款及び登記事項証明書
- 役員に係る前記3に掲げる書類
先ほども述べたように愛知県警のホームページに記載されている添付書類は以上なのでが、実際に届出をするためには追加の指導書類を求められることになります。同じ愛知県警の警察署でも署によって指導書類に違いがあることも普通にあります。それを踏まえて求められることが多い書類の一例を列挙していきます。
- 営業所求積一覧
- 営業所求積図
- 客室求積図
- 音響照明設備図
- 物件の賃貸借契約書
- 物件所有者の使用承諾書
- 飲食店営業許可証のコピー
- メニュー表
- 誓約書 など
あくまで一例ですから、警察署や担当によっても違いが出てきます。やはり大事なことは事前相談などで警察署に確認を欠かさないことが、営業者様とお店にとって貴重な時間を軽減・確保することに繋がります。
深夜営業開始!その後に必要な手続き
変更届
次の事項に変更があった場合は、変更届を提出。
- 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者氏名
- 営業所の名称
- 営業所の構造及び設備の概要(軽微な変更を除く)
変更届出書は、変更のあった日から10日(法人の名称、住所又は代表者の氏名に係るものである場合は、20日)以内に提出してください。
廃止届出
当該営業を廃止したときは、廃止の日から10日以内に廃止届出書を提出してください。
まとめ
ここまでが深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始に必要な手続となります。
本文で許可と届出の違いについて、触れていませんでしたのでこちらで簡単に解説します。
許可 | 届出 | |
諾否の応答義務 | あり | なし |
申請手数料 | あり | なし |
現地調査 | あり | なし |
諾否の応答義務というのは、許認可申請をした場合に行政側が申請者に対して諾否の応答をするべきことと義務付けているものです。これに対し深酒の届出の場合は許認可ではないので、その義務がありません。受領した。という行為そのものでよいとされています。
同様に手数料も無料、現地調査も行わないので、手続き上は簡易な作りになっているようにみえます。それでも取り揃えなければならない書類は風俗営業のそれと比べても遜色ないほどの分量となります。また現地調査が無い分、届出書を始めとする書類のチェックについては、より一層の精査がなされると思ってもよいかもしれません。
行政書士みのり事務所では、風営法に長年ふれてきた専門の行政書士が飲食店許可申請や風営法に係る許可申請・届出をサポートしております。お困りごとやお悩みがある場合に、まずはお気軽にお問い合わせください。
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