改正風営法の実務!追加された添付書類と「密接な関係を有する法人」とは?
※このコラムは令和7年10月現在の状況を基に執筆しています。
6月に一部施行された風営法の一部を改正する法律(以下「改正法」とします。)ですが、本年度の第二段ともいうべき次の改正が、来月11月28日に施行されます。
今回のコラムはそれに伴い今月中旬に通知されました[風営法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令の一部改正](以下「改正府令」とします。)と[風営法施行規則の一部改正](以下「改正規則]の二つの改正の中身について、具体的にどう変わったのかを要点を絞って解説していきます。
目次
改正法のおさらい(令和7年6月28日一部施行)
まずは6月に一部施行された改正法について簡単におさらいしておきましょう。すでに無許可営業などの容疑で逮捕されている報道も、よく見るようになってきました。「知らなかった」では済まされない事案、罰則となります。復習の意味も込めてお付き合いください。
改正法の細かい内容については、今通知とほぼ同時に出された新しい解釈運用基準についてのコラムを予定しております。より詳しく知りたい!という方は、次回のコラムをお待ちください。
接待飲食営業に係る遵守事項の追加(法第18条の3)
⑴ 料金に関する虚偽説明
⑵ 客の恋愛感情につけ込んだ飲食等の要求
⑶ 客が注文していない飲食等の提供
接待飲食営業に係る禁止事項の追加(法22条の2)
- 客に注文や料金の支払等をさせる目的での威迫
- 威迫や誘惑による料金の支払等のための売春(海外売春を含む)をさせること
- 性風俗店勤務、AV出演等の要求をすること
性風俗店によるスカウトバックの禁止(法28条第13項)
性風俗店を営む者がスカウト等から求職者の紹介を受けた場合に紹介料を支払うこと(いわゆる「スカウトバック」)を禁止

無許可営業等に対する罰則の強化
- 風俗営業の無許可営業等に対する罰則の強化
(2年以下⇒5年以下の拘禁刑、200万円以下⇒1千万円以下の罰金) - 両罰規定に係る法人罰則の強化
(200万円以下⇒3億円以下の罰金)
風俗営業からの不適格者の排除(令和7年11月28日施行)
※風俗営業の許可に係る欠格事由を追加
- 親会社等(A、B及びC)が許可を取り消された法人
- 警察による立入検査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
- 暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者

今通知で示されている留意事項として、既に受理されている許可申請のうち許可日が11月28日をまたぐことが見込まれる申請については、後述する新たに提出が求められる添付書類の追完を求められることになります。これから11月28日までに新規で許可申請する場合も同様の提出義務となりますので、注意しが必要となります。

改正府令のポイント:令和7年改正府令の主な内容
それでは改めて改正府令の内容について触れていきましょう。既に提出している書類もありますが、改正法で条文の変更も行われたことに伴った書類となります。
風俗営業の申請者が法人である場合の追加添付書類
ア 法第4条第1項第7号及び第13号に掲げる者のいずれにも該当しないことを誓約する書面
イ 申請者と密接な関係を有する新法第4条第1項第7号イからハまでに掲げる法人があるときは、その名称及び住所並びに代表者の氏名を記載した書面
ウ 申請者が株式会社であるときは、株主名簿の写し(持分会社であれば定款)
・「ア」誓約書について
愛知県行政書士会では新しい誓約書の参考書式が出ています。一部分ではありますが、誓約書の文面を個人用・法人用・法人の役員用分掲載しておきます。
| 個人 | 私は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第4条第1項各号(第7号及び第12号を除く)に掲げる者のいずれにも該当しないことを誓約します。 |
| 法人 | 当法人は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第4条第1項第7号及び第13号に掲げる者のいずれにも該当しないことを誓約します。 |
| 法人の役員 | 私(たち)は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第4条第1項第1号から第6号まで及び第8号から第10号までに掲げる者のいずれにも該当しないことを誓約します。 |
・「イ」密接な関係を有する法人
「密接な関係を有する」の意義は後述する「改正規則の主な内容」で取り上げます。添付書類としては新法第4条第1項第7号イからハに、それぞれ該当する法人の名称、所在地、代表者の氏名を記載することになります。
「ウ」株主名簿の写し
株主名簿とは、会社法で作成が義務付けられている名簿です。法定記載事項を記載又は記録してあると思いますので法人ごとに確認してみましょう。
以上が、改正府令の主な内容となります。誓約書そのものは法定書式というものは存在していません。そのため都道府県によっては様式としてホームページに掲載しない警察本部もあるかもしれません。そんなときは最寄りの風営法に詳しい行政書士などに相談してみてください。
では続いては改正規則についてです。あまり文字数は多くありませんので、いましばらくお付き合いください。
改正規則の主な内容
それでは改正規則についてです。大きく分けて⑴⑵⑶とあるのですが、⑵は浄化協会等について。⑶は遊技機(いわゆるパチンコ、スロットのことです)の認定と検定についての改正です。本コラムとは直接関係の無い分野ですので、今回は⑴の密接な関係を有する法人とは?に絞って解説していきます。
密接な関係を有する法人
密接な関係を有する法人
新法第4条第1項第7号イからハまでに掲げる、風俗営業の許可を受けようとする者と密接な関係を有する法人として、次の者を規定する。(新規則第6条の3関係)
(ア) 申請者が株式会社である場合にその議決権の過半数を所有している者等
(イ) 申請者が持分会社である場合にその資本金の二分の一を超える額を出資している者等
(ウ) 出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより、申請者の事業の方針の決定に関して、前二号に掲げる者と同等以上の支配的な影響力を有すると認められる者等
法律でいう実質的支配者の定義によく似た規定になっています。しかし改正府令及び改正規則では「法人」に限定しています。対して実質的支配者は自然人も入りますので似て非なるものとして考えてください。
特にグループ会社がある場合では、親子兄弟等の会社間で株の行き来があることを想定している規定です。追加された欠格事由に該当しないことを疎明する書類にも、あたります。添付書類に限らないことですが、許可申請に向けての事前準備は万全に行うようにしましょう。
行政書士に依頼するメリット
ここからは手前味噌にはなりますが、許可・届出における行政書士に依頼するメリットについてです。
1.情報収集を任せられる
今コラムに限らず、行政書士が専門とする業務(弊所においては公安委員会・警察署生活安全課への許可・届出等です)については常日頃から法令規則や通知・通達など官公署からの情報を収集しています。
2.ずばり時間を節約できる
許可を得るという作業は膨大な時間を消費することが必要になります。風俗営業の許可申請を例にしてみましょう。
・情報収集・・・・・・・・法令規則の確認、物件情報など
・官公署への訪問・・・・・事前相談、申請、書類の補正、許可証受取りなど
・関係書類の取得・・・・・法務局+市区町村役所など
・保全対象施設調査・・・・営業所周辺約100メートルを徒歩で調査
・営業所の計測・・・・・・レーザー計測器などを使用して計測
・各種図面の作成・・・・・CADを使っての図面作成
・許可申請に必要な書類作成
・営業所の実査立会・・・・警察署、浄化協会などによる実地検査
・許可証の受取り
いかがでしょうか?これに飲食店営業許可に要する時間や移動の時間もプラスされます。これら全てをお一人で行おうとすると膨大な時間を仕事の合間に作らなければなりません。また書類についての質問などで何度も電話をかける必要もあります。足りない書類があれば更に時間を消費していくことになり、オープン日の予定に目途が立たないといったことにもなりかねない場合があるかもしれません。
お悩みや、お困りごとなどは行政書士に相談してみることをおすすめします。お問合せを心よりお待ちしております。
まとめ
改正府令、改正規則の解説は以上となります。
今回の風営法改正ではホストクラブの売掛金問題から端を発して、ここまであっという間に今年二度目となる改正第二弾を迎えます。第一弾では接待飲食営業(1号営業・社交飲食店)や無許可営業、広告規制などが主でした。
第二弾では、1号営業に限らず風営法に係る全ての業種に影響を与えます。既存の許可営業者であっても、新規開拓や事業承継などの際に必要な書類は今回の改正を元に取り揃えることになります。府令、規則はそこまで細かい条文ではありませんので知識として片隅に置いていただければ幸いです。
次回のコラム「風営法解釈運用基準」は1回では無理があるためテーマ別でお送りする予定です。ご一読ありがとうございました。
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