遊興とは

はじめに

 風営法には「遊」から始まる言葉がいくつか使われています。遊技・遊戯・遊興と主に使われるのはこの3つです。遊技は私の前職であるパチンコ営業を始めとする4号営業とは切っても切れない関係にあります。遊戯はそのままのイメージが通用すると思います。今回は最後の「遊興」について解説していきます。

 これから出店を計画しているお店が遊興をさせて、深夜0時以降も営業をしようとする場合(照度の下限制限もあり)には、特定遊興飲食店の許可が必要となります。遊興に該当しない深夜営業の場合には深夜酒類提供飲食店の届出となります。つまり「遊興」を知ることはお店に必要な許可・届出を知ることにもなります。お付き合いのほどよろしくお願いします。

風営法での遊興

解釈運用基準 第十 2 「遊興させる」の意義

⑴「遊興させる」とは文字通り遊び興じさせること。特定遊興飲食店営業として規制対象となるのは、営業者側の積極的な行為によって客に遊び興じさせる場合である。

 ここだけ読むとなんでも遊興に該当してしまいそうです。解釈運用基準では続けて、遊興させるためのサービスを2つの類型に分けて書かれています。

解釈運用基準 第十 2

ア.鑑賞型サービス

 ショー等を鑑賞するよう客に勧める行為、実演者が客の反応に対応し得る状況で演奏・演技を行う行為等は、積極的な行為に当たる。

 これに対し、単にテレビの映像や録音された音楽を流すような場合は、積極的な行為に当たらない。

イ.参加型サービス

 遊戯などを行うよう客に勧める行為、遊戯等を盛り上げるための言動や演出を行う行為等は積極的な行為に当たる。

 これに対し、客が自ら遊戯を希望した場合に限ってこれを行わせるとともに、客の遊戯に対して営業者側が何らの反応も行わないような場合は、積極的な行為に当たらない。

 さらに「客に遊興させる」行為の具体例も挙げられています。

  • 不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の行為を見せる
  • 不特定の客に歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏等を聴かせる
  • 客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる
  • のど自慢大会等の遊戯、ゲーム、競技等に不特定の客を参加させる
  • カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客に歌うことを推奨し、不特定の客の歌に合わせて照明の演出、合いの手等を行い、又は不特定の客の歌を褒めはやす
  • バー等でスポーツ等の映像を不特定の客に見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる

 「接待」の解説では「特定の客」や「特定少数の客」とされていました。「遊興させる」においては「不特定の客」と、その前提を変えていることがポイントとなるでしょう。ここからは深夜営業を行うダーツバーでのダーツをするシーンと深夜営業を行うスポーツバーを例にしてみましょう。

深夜営業を行うダーツバーの場合

 個々のお客さんが自分たちの意思で、自由にダーツに興じるのであれば「遊興させる」には当たらず、規制の対象外です。しかし、お店側がその興じている試合を店内にいる不特定多数の他のお客さんに煽り、応援等をさせたり、照明等で演出すると「遊興させる」に当たることになります。この場合は特定遊興飲食店営業の許可を得ていなければならないということになります。なお、遊興に当たらない行為で深夜も営業する場合は深夜酒類提供飲食店の届出で済むということになります。

深夜営業を行うダーツバーの場合

 一昔前と違い、今は世界中のスポーツをリアルタイムで楽しめるようになりました。その結果として生で試合観戦をしたいというニーズに合わせて深夜まで営業を行うスポーツバーも増えてきました。ではスポーツバーにおいての「遊興をさせる」というポイントに絞ってみていきましょう。

 ただ単に試合の映像を流し、不特定の客に見せる行為。これは遊興させるに当たりません。客自身が自発的に応援を行う場合も、規制の対象外ですが、この場合は深夜酒類提供飲食店の届出が必要です。しかし、お店側が客に呼び掛けて応援等に参加させた場合には遊興に当たりますので特定遊興飲食店営業の許可が必要となります。

 解釈運用基準には続きがあり、深夜酒類提供飲食店での遊興についての例外が書かれています。

解釈運用基準 第十 3 営業の意義

⑶例えば、スポーツ等の映像を不特定の客に見せる深夜酒類提供飲食店営業のバー等において、平素は客に遊興させていないものの、特に人々の関心の高い試合が行われるときに、反復継続の意思を持たずにたまさか短時間に限って深夜に客に遊興をさせたような場合は、特定遊興飲食店営業としての継続性は認められない。

  • 通常営業では遊興をさせていない
  • 世間の注目度が高い試合の日に反復継続の意思がなく
  • その試合の時間帯だけに限って深夜に客に遊興をさせた

 以上の要件を備えていた場合においては、深夜酒類提供飲食店のままで特定遊興飲食店営業には当たらないとしています。特に人々の関心の高い試合というのが解釈が難しいところではありますが、反復継続の意思をもたずに、試合内容にたまたま盛り上がってしまった場合においては継続性が認められないから許可を得なくともよい。とされています。

 とある何年に一度の大きな大会期間中だけのために特定遊興飲食店営業の許可を得るのも大変です。特定遊興飲食店営業の許可は用途地域の制限が深夜酒類提供飲食店より強いことからの例外といったところでしょうか。もちろん、反復継続の意思を持って(明示しなくとも)行った場合には、規制の対象となりますのでご注意ください。

おわりに

行政書士みのり事務所では、次の3つに貢献しくことを理念としています。

  • 安心で安全な街づくり
  • 業界の健全化
  • 順法精神に則る継続可能な営業

 風俗営業とは時に無いもの、陰のようなものとして扱われる場面に遭遇する場合もあります。その業界に携わる事業者様を始め、管理者様、スタッフ様みなさんの伴走者として今後も活動していきます。

投稿者プロフィール

行政書士 木下みのり
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